2023.01.16
演奏会
桑原ゆう作曲「歌虚言の場」Garden of Onomatopeiasは、伶楽舎が委嘱し、今回が初演となる管絃11人編成の作品です。
「歌虚言」とは「絵空事」同様、文学や芸術の中で、うそかもしれないけれど、美化され強調された表現の中でこそ真実が見えてくる、という意味の言葉。また「場(にわ)」とは神を迎え祀る場所、何かを生み出す神聖な空間、ひいては音楽の空間だといいます。
桑原さんは<雅楽ほど「にわ」たりえる音楽はないと思われる>と語っておられ、雅楽の曲を書くことになったら「にわ」と名づけようと決めていたのだそうです。
曲は、雅楽の唱歌と楽器の演奏の関係のように、「ゆあーん ゆよーん ゆやゆよん」という中原中也の詩などの言葉が歌われ、楽器の音に変換され、麗しく展開していきます。
雅楽の歌虚言の場、紀尾井ホールの庭に、どんな真実の音が響くことか、それを夢見てリハーサルに臨んでいます。是非、ご期待ください。
2023.01.14
演奏会
舞楽は「春庭花(しゅんでいか)」をとりあげます。
この曲は左舞の四人舞で、舞人は蛮絵装束を片肩袒(右肩を袒ぐ)し、太刀を佩き、冠には挿頭花を着けて舞います。二帖繰り返して奏されますが、二帖目になると鞨鼓や太鼓の打法が変わって賑やかになり、四人の舞人は舞台の上をゆっくり回りながら、花が開いたり閉じたりするかのように舞うという、華やかな舞です。
楽曲は、春の調子とされる双調の曲で、明るい響きを持つ名曲です。
平安時代の頃、「春庭花」は、元日節会など春の節会の参音声として用いられたとも伝えられます。新春にふさわしい舞楽「春庭花」をお楽しみください
2023.01.14
演奏会
1月28日に行われる、「伶楽舎第十六回雅楽演奏会」の各曲のご紹介をいたしましょう。
今回は、管絃、舞楽といった古典曲に加え、2曲の現代作品を演奏します。
「管絃」は、舞のつかない器楽合奏で、今回は「太食調音取」「仙遊霞」「合歓塩」を取り上げます。
「仙遊霞」は斎宮が伊勢に赴く途中、琵琶湖の勢田(瀬田)の橋の上を通るときに、楽人が参考してこの曲を奏したと伝えられる曲です。
「合歓塩」は舞楽「太平楽」の「急」の部分としても演奏されますが、今回は管絃演奏となります。
これらの曲の属する「太食調」の箏の調絃には、珍しく呂と律の2種類があります。太食調の楽曲の多くは律の調絃なのですが、今回取り上げる「太食調音取」と「仙遊霞」は呂の調絃となっていますので、ちょっと聞きなれないように思うかもしれません。
呂の箏調絃は E #F #G B #C 、律の箏調絃は E #F A B #C の音を含んでいて、呂には#Gの音が含まれているのが特徴です。
「合歓塩」のほうは、律の調絃となりますので、呂と律を聴き比べながらお楽しみください。
2023.01.08
お知らせ
2022.12.27
放送・放映
今年も残すところ数日となりました。
年明け早々、元日お昼放送『新・にっぽんの芸能 新春スペシャル』
に伶楽舎が出演いたします。
皆さま是非ご覧ください。
2023年1月1日 12:00~12:59(NHK Eテレ)
NHKワールド・プレミアムで、当日深夜26:35(1月2日午前2:35)から、海外向けの放送があります。
国内での再放送はございませんが、放送後1週間NHKプラスでの配信があります。
2022.07.22
演奏会
明日、7月23日開催の「伶楽舎子ども雅楽コンサート」は感染症対策を取りながら、予定通り開催されます。
なおチケットは全て完売しており、当日券の販売もありませんので、お気をつけください。
2022.04.25
演奏会
~抜頭は髪振り上げたる。まみなどはうとましけれど、楽もなほいとおもしろし。~
~落蹲は、二人して、膝踏みて舞ひたる。~
『枕草子』の舞の段で挙げられている曲目は、「駿河舞」「求子舞」「太平楽」「鳥(迦陵頻)」「抜頭」「落蹲(納曽利)」です。
いずれも現代でも人気のある舞ですが、今回の演奏会で取り上げるのは「抜頭」と「納曽利」です。
「抜頭」の面は赤ら顔に大きな鼻、太い眉毛が吊り上がっているのが特徴的で「まみなどはうとまし(目つきなどが気味悪い)」というのはこのあたりでしょうか。また面につけられた髪が髪毛ではなく、縒り紐でできた髪となっているのも他の面とは異なっています。
左方と右方の両方で伝承されており、右方で舞われることの多い舞ですが、今回は左方の只拍子で上演します。
もう一曲は「納曽利」です。清少納言は「落蹲」と記していますが、現在では二人舞の場合は「納曽利」、一人舞の場合は「落蹲」と呼ぶことが多いようです。高麗楽で伴奏される右方の舞で、面をつけた二人が舞い、双竜の舞とも呼ばれています。
2022.04.25
演奏会
~臨時の祭の日・・・横笛をいみじう吹きたてたる、あなおもしろと聞くほどに、半らばかりより、うち添えて吹き上りたるこそ、ただいみじう麗し髪持たらん人も、皆たちあがりぬべけれ心地すれ。やうやう琴、笛にあわせて歩み出でたる、いみじうをかし~
~舞は駿河舞、求子、いとをかし~
臨時の祭といえば賀茂神社もしくは石清水八幡の臨時祭で、東遊が上演されます。清少納言は臨時の祭の見物が大好きだったようで、その記述がいくつもあります。
上記の部分では「笛が吹きたてているところに篳篥が加わると、髪が立ちあがるような心地がする」というのですが、これは臨時の祭で演じられる「東遊」の冒頭で、和琴と高麗笛、篳篥が「狛調子」を奏でるシーンかもしれません。
東遊の後半にあたる「駿河歌」と「求子歌」には舞がついており、清少納言はこの舞がお気にいりだったようですね。
今回の演奏会では、歌と笏拍子、和琴、高麗笛、篳篥で、「狛調子」「求子歌」などをお聴きいただきます。
2022.04.23
演奏会
清少納言は絃楽器の中では琵琶がお好きだったようです。
~弾くものは~
の段では、まず琵琶をあげ、「風香調」「黄鐘調」「蘇合急」「春鶯囀」と曲を連ねています。
~箏のこと、いとめでたし。調べはさうふれん。~
続いて箏についても素晴らしいと評してから、「想夫恋」という曲名を挙げています。
この「想夫恋」は「相府蓮」として現在も演奏されている平調の曲ですが、箏の手にとりたてて他と違うところがあるわけではなく、箏だけで演奏されることもありません。
清少納言がわざわざ曲名を挙げているのは、もしかしたら「想夫恋」という曲名が素敵だったからなのでは?と勘繰りたくもなりますが、一方で、もしかしたら彼女の聞いた「想夫恋」は、今とは少し違う弾き方だったかもしれない、とも思えます。
そこで今回は、「仁智要録」という12世紀の箏譜を参照し、これを手掛かりにして「想夫恋」を演奏する試みを行います。
「仁智要録」に記された昔の調絃法、今では失われてしまった左手で絃を推す奏法、数種書き分けられている右手奏法、テンポなどについて解釈しながら古譜を読み解いてみました。
箏独奏と、箏・笙による二重奏にて試演する予定です。これなら「想夫恋」をまっ先に挙げた清少納言に共感できる、といっていただけるような魅力的な演奏になるかどうか・・・どうぞご期待ください。
さらに、現行の「相府蓮」も滅多に演奏される機会のない曲ですので、16人編成の管絃で演奏する予定です。
「想夫恋」と「相府蓮」どちらもお楽しみください。
2022.04.23
演奏会
5月24日の伶楽舎雅楽コンサートno.39は「枕草子を聴く」と題し、『枕草紙』に記された雅楽のシーンや楽器・楽曲評をご紹介し、彼女の感性を通して見えてくる雅楽の世界をお楽しみいただきます。
~笛は横笛、いみじうをかし。遠うより聞ゆるが、やうやう近くなりゆくもをかし。近かりつるがはるかになりて、いとほのかに聞ゆるも、いとをかし。~
遠くから聞こえる笛の音がだんだん近くなる面白さ、また遠のいていく音に耳を澄ます清少納言の感覚に、現代の私たちも共感できますね。
~おはしまし着きたれば、大門のもとに高麗唐土の楽して、獅子・狛犬をどり舞ひ、乱声の音、鼓の声にものもおぼえず~
清少納言が我を忘れて感動したという「獅子」「狛犬」は、ともに伎楽や散楽と関係する曲で、大法会などで演じられていたようですが、現在は演奏されていません。今回は、芝祐靖の復曲により、左方の「獅子乱声」は龍笛の独奏、右方の「狛犬乱声」は高麗笛の退吹と太鼓、鉦鼓で演奏します。
~笙の笛は、月のあかきに、車などにて聞えたる、いみじうをかし。~
笙の笛は、月の明るい晩に、牛車に乗っていて聞こえてくるのが、たいへん趣がある、と、清少納言は笙もお好きだったようです。
今回は「平調調子」を笙5管で演奏いたしますので、月の明るい晩を想像しながらお聞きください。
~篳篥は、いとかしがましく、秋の虫をいはば、くつわむしなどの心地して、うたてけぢかく聞かまほしからず。ましてわろく吹きたるはいとにくきに~
篳篥はくつわむしみたいに、とてもうるさくて、傍では聞きたくない。まして下手に吹いたものは本当に腹立たしい・・・! 清少納言は篳篥には手厳しい意見ですね。
「わろく吹きたるは・・・」と酷評されないようにと願いつつ、今回の演奏会では「黄鐘調調子」を篳篥5管の退吹で演奏いたします。