楽器紹介

1000年の時を超えて現代に受け継がれている楽器です。

笙(しょう)

17本の竹を匏(ほう)に差し込んだ楽器で、吹き口から息を入れて演奏します。それぞれの竹の根元には金属のリードが付いており、根元の穴をふさぐと音が鳴ります。合奏の中では主に「合竹」という和音を演奏します。また、吹いても吸っても音が鳴るのが特徴です。

篳篥(ひちりき)

表に7つ、裏に2つの指孔が開けられた竹で出来た管に、葦(よし)で作った蘆舌(ろぜつ)と呼ばれるリードを差し込んで演奏する縦笛です。押さえている指を変えることなく口の圧力だけでなめらかに音をあげたり下げたりする「塩梅(えんばい)」という奏法が特徴です。

龍笛(りゅうてき)

竹製の7孔の横笛で、篳篥と同様、樺という桜の木の皮を細く切って紐状にしたものを巻いています。その音色は龍の鳴き声を模したものとも言われています。篳篥より音域が広いので、合奏の中では篳篥の旋律を装飾するように、絡み合いながら楽を進めていきます。管絃や唐楽の舞楽、催馬楽や朗詠など、雅楽の横笛の中で最も良く使われる笛です。

高麗笛(こまぶえ)

竹製で6孔の横笛で、主に高麗楽に、また国風歌舞の東遊にも用いています。3種類の笛の中で一番短く、長さは36cmほどで、龍笛より1音高い音域を奏します。

神楽笛(かぐらぶえ)

竹製で6孔の横笛ですが、雅楽で用いる3種類の笛の中では最も長く、長さは約45cm ほどです。音域は龍笛より1音低く、神楽歌(御神楽)の伴奏に用います。

琵琶(びわ)

固い木材を組み合わせて作った胴に4本の絹糸の絃を張り、右手の撥で絃を押し付けるようにしながら演奏します。左手で柱(じゅ)(フレット)を押さえて音の高さを変えます。雅楽での絃楽器の役割は主にリズム楽器で、琵琶は主にアルペジオ(分散和音)を演奏します。

箏(そう)

桐の木の胴に、13本の絹糸の絃を張り、右手の親指、人差し指、中指に爪を付けて演奏します。爪は象牙ではなく竹製です。琵琶と同様、リズム楽器として「閑掻、早掻」(しずがき、はやがき)などの分散和音ふうの音型を主に演奏します。

和琴(わごん)

木の胴に6絃の絹糸を張った箏で、右手に持つ「琴軋」(ことさぎ)で、或いは左手指ではじいて演奏します。「三」(ざん)、「四」(じ)など、6絃をアルペジオで弾き、左手で音を止める奏法が特徴的です。御神楽、東遊びなど国風歌舞で、歌の伴奏に用いられます。

鞨鼓(かっこ)

木の胴の左右両面に皮を当て、革紐で締めた打楽器です。両手に持った細い桴で打ちます。「諸来」、「片来」、「正」などの奏法があり、太鼓、鉦鼓と一緒に、リズムのパターンを演奏します。また、鞨鼓は合奏のリーダー的な役割を持っています。

三ノ鼓(さんのつづみ)

木の胴の両面に皮をあてて、紐で締めてあり、左手で調べ緒を押さえ、右手に持った桴で片面のみを打ちます。高麗楽(こまがく)や右方の舞楽の伴奏に使い、テンテーンとリズムを刻みます。リーダー的な役割を持つのは鞨鼓と同様です。

太鼓(たいこ)

木の胴の両側に革を鋲で止めた鋲打ちの吊り太鼓です。金属の飾りや獅子などの豪華な彩色画が特徴です。鞨鼓や鉦鼓と一緒にリズムパターンを演奏し、左手の桴で打つ小さい音を「図」(ずん)、右手の桴の大きい音を「百」(どう)と呼び、「図百」が1セットです。

鉦鼓(しょうこ)

金属の皿形の鉦を木枠に吊るしている打楽器で、その内側を桴で摺るように打ちます。片桴のチン、両手のチチン、と高音の音色で、鞨鼓、太鼓とともにリズムパターンを演奏します。

笏拍子(しゃくびょうし)

笏を二つに割ったような形の打楽器で、御神楽(みかぐら)など国風歌舞(くにぶりのうたまい)や催馬楽(さいばら)などの歌物(うたもの)で用います。歌の主唱者が手に持って歌いながら打ち、拍子を取ります。

下記のサイトに、雅楽の楽器やオーケストレーションについて、日本語、英語、フランス語、スペイン語で記されています。https://ccrma.stanford.edu/groups/gagaku/

長い年月において消えてしまった楽器を復元しました。

竽(う)

笙と同型の楽器で、笙より1オクターブ低い音域を奏します。正倉院には3管残されており、管長は79㎝〜92㎝と大型の楽器。独特の深い音色を響かせます。

排簫(はいしょう)

18本の竹を縦に並べたパンフルートの一種で、正倉院に残る「甘竹簫」(かんちくしょう)から復元しました。素朴な音色とグリッサンドなど独特の奏法が特徴です。

横笛(よこぶえ)

現行の龍笛と同様、7孔ですが、竹に穴をあけただけの素朴な横笛です。正倉院には、竹以外に玉や象牙製の管もあり、合計4管残っています。澄んだきれいな音を出します。

 

正倉院尺八(しょうそういんしゃくはち)

正倉院に残る尺八は、竹以外に玉、象牙、石製など合計8管あり、34㎝〜43㎝程度と小型で、指孔は表に5孔、裏に1孔の計6孔です。軽やかな音色が特徴です。

 

 

大篳篥(おおひちりき)

楽器そのものは残っておらず、記録の中でのみ知られています。篳篥より4度下の低音域を奏します。篳篥と同様、自由に音程を変えられる塩梅が特徴で、力強く深い音色です。
(写真の左側が大篳篥、右側は篳篥。)

 

箜篌(くご)

唐から日本にもたらされたのものの、中国には残らず、正倉院にのみ残欠が伝わっています。1m60㎝程の大型の竪型のハープで、23本の絃を左右の手指でかき鳴らして演奏します。

 

阮咸(げんかん)

円形の胴に長い棹を持つ4絃の琵琶で、この楽器を好んだという竹林七賢人の一人、阮咸に因んでこの名前が付けられたと言われています。細い撥か指で演奏し、軽やかな響きを聞かせてくれます。

 

五絃琵琶(ごげんびわ)

首の曲がった四絃琵琶の起源がペルシャにあるのに対して、この真っ直ぐの棹の五絃琵琶はインド起源と言われ、中央アジアを経て唐に伝えられました。壁画や記録には多く記載が残っていますが、楽器は正倉院に残る一面が世界でただ一つの伝世品です。指、又は撥で演奏したようです。

 

鉄絃箏(てつげんそう)

雅楽の箏と同じですが、やや小振りの本体に鉄絃を張っています。正倉院には絹の絃も残されていますが、合奏の中での音色の変化を考え、中国の古箏を参考に金属絃を使用しています。

 

方響(ほうきょう)

音階に調整した金属片を枠に吊して打つ体鳴楽器で、石や玉製の「編磬」を模して作られました。多くは16枚ほどをセットにして吊し、2本の桴を用いて、華やかな音色で旋律を奏します。

 

律鐘(りっしょう)

古代中国の「編鐘」は日本には伝わっていませんが、それを模して、小型の鐘を複数吊して制作した楽器です。余韻のある金属音を響かせます。

磁鼓(じこ)

正倉院に残る陶磁器製の「三彩鼓胴」を復元し、胴に見合う革を張った楽器で、鼓胴の長さは現行の三ノ鼓より少し短いようです。柔らかな音色の打音が特徴です。(写真の復元品は国立劇場所蔵)