2024.05.04
演奏会
源氏の君が笛を吹きながら幼い紫の君に箏を教えるシーン(「紅葉賀」)に、「ほそろくせりというものは名は憎けれど、おもしろう吹きすまし給へるに、掻き合わせまだ若けれど、拍子違わず上手めきたり」と記されています。今聞いても面白い曲名ですが、昔もそう思われていたのですね。
実はこの曲、今では長保楽破(ちょうぼうらくのは)と呼ばれています。保曽呂倶世利を破とし、加利夜須を急として舞楽にしたのが長保年間だったためです。
源氏の君は笛が吹けただけでなく、箏を教えることができるくらい精通していらしたんですね。そして紫の君も覚えが早くて音楽の才能があったことがうかがえます。
普段この曲は舞楽として上演いたしますので、篳篥・高麗笛と打ちもののみで演奏するのですが、今回は琵琶・箏も入れた管絃で演奏いたします。
2024.05.04
演奏会
伶楽舎の雅楽コンサートno.42では、源氏物語に描かれた音楽シーンをいくつか取り上げてご紹介します。
「秋風楽」は物語に数回登場する曲です。「紅葉賀」の巻では子どもが舞う童舞の曲として描かれ、「少女」では、内大臣(かつての頭中将)が和琴を掻き合わせながら、この曲を唱歌してするシーンがあります。もう1か所「篝火」に「風の音秋になりけりと、聞こえつる笛の音」と記されているのも「秋風楽」のことかもしれません。
今回の「秋風楽」の演奏は16名編成の管絃に和琴を加え、物語に描かれているような、ごく少ない人数の貴族たちが楽しく吹いたり弾いたりしている風情も、感じられるよう工夫してみたいと思っています。「さしやりて ゆしたまふ御手つき いとうつくしければ」と「源氏物語」に記されている、お箏の絃を左手で押す奏法や、琵琶の風香調の調絃など、当時の調絃や弾き方もさぐってみます。
紫式部の時代の雅楽の響きに想像を膨らませながら聞いていただければ幸いです。
2024.05.03
お知らせ
国立劇場のキャラクター・くろごちゃんが案内人を務める「くろごちゃんねる」にて伶楽舎が取り上げられます。5月7日より、解説と実演で雅楽を紹介する「雅楽を楽しむ」を配信にてご覧いただけます。
※くろごちゃんねるは、今回からイープラス・ストリーミング+より配信します。
https://eplus.jp/sf/detail/4095690002
2024.04.21
演奏会
5/31(金)開催、伶楽舎雅楽コンサートno.42源氏物語を聴くは、お陰さまで前売券、完売いたしました。
当日券は、若干数ご用意できる予定です。
18時より、四谷区民ホール受付にて販売いたします。詳細の発表は後日、当サイトニュース欄および公式Facebook、公式Xに掲載いたします。
2024.01.24
演奏会
1/29開催、伶楽舎雅楽コンサートno.41江戸城の雅楽は、お陰さまで前売券、完売いたしました。
当日券は、若干数(15枚程度)ご用意があります。
18時より、四谷区民ホール受付にて販売いたします。
2024.01.23
演奏会
江戸時代には様々な人が雅楽研究を行っていますが、八代将軍吉宗の二男、田安宗武(1715-1771)は、古楽書にもとづく復古を志して膨大な雅楽研究を残したことで知られています。
今回の演奏会では、宗武がとりわけ気に入ってと絶賛したという「安楽曲」を宗武の記した『楽曲考附録』の楽譜などを参考にして再現してみます。
またこの曲の調は「正宮調」という唐代の文献に見える調に属する1曲として扱われていますので、「安楽曲」の前に「正宮調調子」を演奏します。
正宮調とは聞きなれない調名ですね。今の雅楽にはありませんが、宗武は壱越調の枝調である沙陀調にあたると考えています。
確かに「安楽曲」を吹いてみると、壱越調とはちょっと違う音の巡りが入っているようです。
この曲、一般には「安楽塩」と呼ばれている曲なのですが、「塩」を「曲」と呼び変えたのも宗武のこだわりがあるようです。
宗武が「正しい中に美しさがあり、なんとも言えずに面白い」という「安楽曲」ですが、果たしてどのような曲なのでしょうか。
どうぞお聴きになってみてください。
2024.01.06
演奏会
「青海波」といえば、源氏物語の中で、朱雀院の御賀の折に若き光源氏が舞った舞としてとても有名ですね。
実際にもこの曲は、院の御賀の折などに時の権力者が念入りに準備し、公卿が舞い、大勢の垣代が参加する、たいへん大掛かりで特別な舞楽曲だったのですが、足利義教が永享9年(1437)に室町殿行幸で催してからは、応仁の乱に始まる戦乱の中で催される機会もなくなっていました。
江戸時代、三代将軍家光は寛永3年(1626)の後水尾帝の二条城行幸の折、実に190年ぶりに青海波の舞楽を復興します。殿上人が輪台・青海波を舞い、34名の垣代が大輪小輪を作り、箏・琵琶は天皇や親王らが演奏するという故実に沿った華やかな演出でした。
現在宮内庁楽部にある鼉太鼓一対は、この時に用意されたものを二条城から運んだと伝えられ、現在使用されている麹塵色の装束等もこの時の様式がその後踏襲されたと言います。
この時は京都の二条城での上演でしたが、四代将軍家綱の時代、寛文5年(1665)には江戸城でも青海波が上演されています。これは家康公五十周忌に際し、三方楽所の楽人50人が日光に赴いて舞楽を行った還立として江戸城で催されたものでした。蘇合香、退走禿とともに40年ぶりに再興されたといいます。
今回の伶楽舎公演では垣代の演出はございませんが、琵琶・箏を入れた管絃舞楽で青海波を上演いたします。華やかな舞をお楽しみください。
2023.12.29
演奏会
伶楽舎雅楽コンサートno.41は江戸時代がテーマ。
コンサートの前半では、江戸時代の人々の雅楽に対する試みをいろいろご紹介します。
その一つが荻生徂徠編「秋風楽」です。
「秋風楽」といえば、源氏物語「紅葉賀」で童舞として舞われたことが記されていて、名前が知られていますが、現在は廃絶し演奏されることがありません。
実は以前にこの曲を伶楽舎が復曲し、2006年の国立劇場雅楽公演「管絃―失われた伝承を求めてー」で管絃として演奏したことがありましたが、今回の公演で演奏する「秋風楽」は管絃ではなく、琵琶と笛のついた「歌」となっています。
江戸時代の儒学者、荻生徂徠が、かつてはこの「秋風楽」が歌詞をつけて歌われていたらしき譜を見て興味を持ち、これに琵琶を付けた楽譜が残されていますので、その歌を再現してみようという試みです。
荻生徂徠が「秋風楽」の「歌」と出会った経緯は、以下のように伝えられています。
後水尾天皇から狛家(楽家の一つ)に下賜された「琴用指法」という七絃琴に関する本があるのですが、この本を狛近寛が荻生徂徠に見せたところ、反古のような紙背に和歌が記されて笛譜が付けられており、最初は催馬楽かと思ったのですがそうではなかった。その笛譜は「秋風楽」だったというのです。
徂徠が見たという紙背に記された譜と歌詞が、いつ頃誰によって書かれたものかはわかりませんが、雅楽の曲がかつては歌をつけて歌われていたなんて興味津々ですね。徂徠もこの譜に興味を持ち、歌う人に都合が良いようにと琵琶譜をつけた「秋風楽章」を残しています。
今回は、遠藤徹先生にご教示いただきながら、この「秋風楽」の歌詞に、荻生徂徠による琵琶譜を合わせて演奏してみます。
儒学者と楽人との交流や、雅楽に対する儒学者の興味の一端を、この曲を通してご紹介できればと思います。
2023.12.20
未分類
伶楽舎雅楽コンサートno.41では、江戸城の雅楽 を取り上げます。
江戸時代は、平安時代に次ぐ雅楽隆盛期で、公家、武家のみならず、町民、農民にも雅楽愛好家が増え、伝承の途絶えた催馬楽曲などが復興されて、現在の雅楽の基が築かれた時代でした。
今回の演奏会第二部では、文政6年(1823)3月に、十一代将軍徳川家斉の左大臣昇叙転任の大饗が行われた際に、家斉の御前にて行われた「柳営管絃」のご紹介をします。
この時の演奏者の記録によると、絃と歌は堂上家の6名が奏し、京都・奈良・大阪から江戸に下った18名の楽人に加え、呂の曲には江戸城在勤の紅葉方楽人5名が参加したようです。
「江戸城大広間管絃之図」を見ると、江戸城白書院の大広間の中ほどに、琵琶、和琴、箏や笏拍子を手にした公卿らが座り、そこから少し離れた、幕に囲われた所に楽人らしき人が座っている様子がわかります。
文政6年に演奏されたのは下記の曲でした。
呂 双調調子、安名尊、鳥破 只拍子、席田、鳥急 残楽、胡飲酒破
律 平調調子、万歳楽 只拍子、伊勢海、五常楽
(文政11年にも柳営管絃があり、胡飲酒破が武徳楽、伊勢海が更衣だったほかは同じ曲目でした。)
今回の演奏会のすべてを演奏すると長くなりますので、今回はその一部のみを取り上げます。
呂 双調調子、催馬楽 席田、鳥急(残楽)
律 平調調子、催馬楽 伊勢海(只拍子)、萬歳楽(延只拍子)、五常楽急
・催馬楽は一度伝承が途絶えたものの、江戸時代に復興された歌です。同じ曲について幾通りも復曲が試みられたりしていますが、特に呂の催馬楽は復興が難しかったようで、今もあまり演奏される機会がありません。
箏琵琶の調絃を変えて律風に歌われることもありますが、今回は「席田」を双調の調絃のままで演奏します。
・「鳥急」は曲の途中から演奏者が減っていき、最後は絃楽器と篳篥奏者1人のみが残る「残楽」で演奏されたようです。箏の華やかな手を聞かせる輪説が聴きどころですが、その譜が明治撰定譜にはありませんので、古譜を参考にしながら今回のために用意した輪説譜で演奏いたします。
・「萬歳楽」は通常は延拍子で奏されますが、明治撰定譜には延只拍子の譜も記されています。
今では延只拍子で奏することは滅多にありませんが、文政6年も11年も延只拍子で演奏されていましたので、今回は延只拍子に挑戦します。
121234と2拍子と4拍子が交互に現れる只拍子が、ゆったり引き延ばされたのが延只拍子でしょうか。独特の時間の流れをお感じください。
・催馬楽「伊勢海」は、一度演奏伝承が途絶え、江戸時代に何度も試行しつつ復興された曲です。
今回は文政6年の柳営管絃で使用された楽譜に従い、只拍子にて演奏します。
現在歌われている伊勢海と同じような節も出てきますが、拍子が違うので随分印象が違うかもしれません。
今から200年前の江戸城での管絃演奏を再現することはとてもできませんが、そこに思いを馳せながらお聴きください。
2023.12.17
お知らせ
子どもたちに大人気の図鑑NEOシリーズに「音楽」の図鑑が誕生しました。
音楽の歴史、世界の音楽、約300種の楽器を紹介しています。雅楽の紹介ページには伶楽舎も載っております。スマホ等で演奏音源や動画もたっぷり楽しめます。さらに、特典DVD(約70分)つきで、子供だけでなく大人も十分楽しめる充実の内容です。是非お手にとってご覧ください。