2017.07.26
演奏会
雅楽童話『ききみみずきん』楽曲解説
=こどものみなさまへ=
みなさんは、カラスや、牛の声を聞いたことがありますか?鳥や動物たちは、私たち人間にはわからない言葉で、いつも楽しそうにおしゃべりをしています。もしも、その言葉やお話がわかったら、わたしたちも公園や森を歩くのがどんなに楽しくなるでしょう?
「ききみみずきん」の主人公(やすけ)は、キコリという山で木を切るお仕事の若者です。森でキツネの子を助けたお礼に、鳥や動物たちのおしゃべりが人の言葉で聞こえる魔法の頭巾(帽子)をもらいました。さて、この物語にはどんな動物が登場するでしょう?そして、若者(やすけ)はその頭巾をどんな事に使うのでしょうか?
ここ↓にある音楽を聴いて、みなさんもいっしょに歌ってくださいね!
https://youtu.be/eBblgchUObs
=大人の皆様へ(初演時プログラムノートより)=
「ききみみずきん」は、日本でよく知られた童話です。不思議な頭巾をかぶると、鳥や動物の声が人の言葉となって聞こえてくるというお話です。ここに登場する「ずきん」は、現代でいえば、知らない国の言葉を即座に翻訳してくれるスマートフォンのような便利なメディアです。そして、主人公の彌祐(YASUKE)は、このメディアを駆使して人生を切り拓くのでした?!
ところで、雅楽では、初めに”唱歌”という旋律をなぞったような歌を習います。古典の唱歌には、言葉としての意味はありませんが、音楽を言語化して捉えるという発想はとてもユニーク且つ記憶の身体性に適っており、私は、雅楽千年存続の秘密の一つではないかと思うのです。
そこで、雅楽童話「ききみみずきん」の世界では、雅楽古典曲に現れる音型の中から特徴的なフレーズを選び出し、これを鳥や動物たちの鳴き声に見たて、さらに日本語の語感に当てはめて、物語のセリフに翻訳してみました。もちろん、この作業を手伝ってくれる便利な翻訳機はありません。しかし、楽器各々の古典的な奏法にこれらを発見する楽しさは、思えば子供の頃、かっこいいと思う新しい言葉に出逢うたび、それを何度も唱えて遊んだ経験と重なります。そう、使い古された言葉が子供にとっては新鮮なように、千年の歴史を持つ雅楽は、発見と咀嚼の喜びに満ちているのです!
さて、この作品は単なる音型の翻訳にとどまらず、聴き手のアナタに更なる謎掛けとトランスクリプションを期待します。演奏される曲中に、何種類の生き物が登場するか、どんな意図を掴みとっていただけるでしょうか?
東野珠実記