2023.12.29
演奏会
伶楽舎雅楽コンサートno.41は江戸時代がテーマ。
コンサートの前半では、江戸時代の人々の雅楽に対する試みをいろいろご紹介します。
その一つが荻生徂徠編「秋風楽」です。
「秋風楽」といえば、源氏物語「紅葉賀」で童舞として舞われたことが記されていて、名前が知られていますが、現在は廃絶し演奏されることがありません。
実は以前にこの曲を伶楽舎が復曲し、2006年の国立劇場雅楽公演「管絃―失われた伝承を求めてー」で管絃として演奏したことがありましたが、今回の公演で演奏する「秋風楽」は管絃ではなく、琵琶と笛のついた「歌」となっています。
江戸時代の儒学者、荻生徂徠が、かつてはこの「秋風楽」が歌詞をつけて歌われていたらしき譜を見て興味を持ち、これに琵琶を付けた楽譜が残されていますので、その歌を再現してみようという試みです。
荻生徂徠が「秋風楽」の「歌」と出会った経緯は、以下のように伝えられています。
後水尾天皇から狛家(楽家の一つ)に下賜された「琴用指法」という七絃琴に関する本があるのですが、この本を狛近寛が荻生徂徠に見せたところ、反古のような紙背に和歌が記されて笛譜が付けられており、最初は催馬楽かと思ったのですがそうではなかった。その笛譜は「秋風楽」だったというのです。
徂徠が見たという紙背に記された譜と歌詞が、いつ頃誰によって書かれたものかはわかりませんが、雅楽の曲がかつては歌をつけて歌われていたなんて興味津々ですね。徂徠もこの譜に興味を持ち、歌う人に都合が良いようにと琵琶譜をつけた「秋風楽章」を残しています。
今回は、遠藤徹先生にご教示いただきながら、この「秋風楽」の歌詞に、荻生徂徠による琵琶譜を合わせて演奏してみます。
儒学者と楽人との交流や、雅楽に対する儒学者の興味の一端を、この曲を通してご紹介できればと思います。