2023.12.20
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伶楽舎雅楽コンサートno.41では、江戸城の雅楽 を取り上げます。
江戸時代は、平安時代に次ぐ雅楽隆盛期で、公家、武家のみならず、町民、農民にも雅楽愛好家が増え、伝承の途絶えた催馬楽曲などが復興されて、現在の雅楽の基が築かれた時代でした。
今回の演奏会第二部では、文政6年(1823)3月に、十一代将軍徳川家斉の左大臣昇叙転任の大饗が行われた際に、家斉の御前にて行われた「柳営管絃」のご紹介をします。
この時の演奏者の記録によると、絃と歌は堂上家の6名が奏し、京都・奈良・大阪から江戸に下った18名の楽人に加え、呂の曲には江戸城在勤の紅葉方楽人5名が参加したようです。
「江戸城大広間管絃之図」を見ると、江戸城白書院の大広間の中ほどに、琵琶、和琴、箏や笏拍子を手にした公卿らが座り、そこから少し離れた、幕に囲われた所に楽人らしき人が座っている様子がわかります。
文政6年に演奏されたのは下記の曲でした。
呂 双調調子、安名尊、鳥破 只拍子、席田、鳥急 残楽、胡飲酒破
律 平調調子、万歳楽 只拍子、伊勢海、五常楽
(文政11年にも柳営管絃があり、胡飲酒破が武徳楽、伊勢海が更衣だったほかは同じ曲目でした。)
今回の演奏会のすべてを演奏すると長くなりますので、今回はその一部のみを取り上げます。
呂 双調調子、催馬楽 席田、鳥急(残楽)
律 平調調子、催馬楽 伊勢海(只拍子)、萬歳楽(延只拍子)、五常楽急
・催馬楽は一度伝承が途絶えたものの、江戸時代に復興された歌です。同じ曲について幾通りも復曲が試みられたりしていますが、特に呂の催馬楽は復興が難しかったようで、今もあまり演奏される機会がありません。
箏琵琶の調絃を変えて律風に歌われることもありますが、今回は「席田」を双調の調絃のままで演奏します。
・「鳥急」は曲の途中から演奏者が減っていき、最後は絃楽器と篳篥奏者1人のみが残る「残楽」で演奏されたようです。箏の華やかな手を聞かせる輪説が聴きどころですが、その譜が明治撰定譜にはありませんので、古譜を参考にしながら今回のために用意した輪説譜で演奏いたします。
・「萬歳楽」は通常は延拍子で奏されますが、明治撰定譜には延只拍子の譜も記されています。
今では延只拍子で奏することは滅多にありませんが、文政6年も11年も延只拍子で演奏されていましたので、今回は延只拍子に挑戦します。
121234と2拍子と4拍子が交互に現れる只拍子が、ゆったり引き延ばされたのが延只拍子でしょうか。独特の時間の流れをお感じください。
・催馬楽「伊勢海」は、一度演奏伝承が途絶え、江戸時代に何度も試行しつつ復興された曲です。
今回は文政6年の柳営管絃で使用された楽譜に従い、只拍子にて演奏します。
現在歌われている伊勢海と同じような節も出てきますが、拍子が違うので随分印象が違うかもしれません。
今から200年前の江戸城での管絃演奏を再現することはとてもできませんが、そこに思いを馳せながらお聴きください。